インドの時間は、とても分かりやすくて心地いいと感じることがあります。
広大な国土に対してタイムゾーンはたったひとつ。サマータイムもなく、国中どこへ行っても時計の針は同じ刻みを保っています。複雑な時間をひとつにまとめる大らかさは、どこか潔く、過ごしやすさすら感じさせてくれます。
けれど、世界時計と照らし合わせたときに、ふと小さな引っかかりが生まれます。インド標準時は協定世界時(UTC)から「+5時間30分」という、30分の端数がつく設定になっているのです。
1時間単位の区切りになじんだ感覚からすると、この「30分のズレ」は少しだけ不思議な手応えを残します。計算しようとすると一瞬の躊躇が生まれ、キリのいい世界からすこしだけ浮き上がってしまうような感覚。
分かりやすさと、微妙なズレ。
完璧に整えられた規則の中に、ふと現れる30分の余白。その絶妙な中端さは、効率だけで割り切れない人間の営みや歴史の移ろいを、静かに物語っているのかもしれません。