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シシトウとトウガラシの、静かな境目

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お店の棚や台所に並ぶシシトウとトウガラシは、よく似た姿をしています。

どちらも同じナス科トウガラシ属の植物であり、植物学的にはほぼ同じ仲間です。けれど、私たちが普段「シシトウ」と呼ぶものは、辛味成分であるカプサイシンが極めて少なくなるよう選抜されてきた甘味種であり、日常の食卓に親しみやすい野菜として届きます。

形や色の境界線はとても曖昧です。緑色の細長い身をかじったとき、素直な甘みとほろ苦さが広がるか、それとも尖った刺激が突き抜けるか。ごく稀に、辛くないはずのシシトウの中に強い辛味を持つ個体が混ざることがあるのも、彼らが本来同じルーツを持っていることの証なのかもしれません。

見た目では区別がつかない、ごく小さな違い。

完璧に分類されているように思える食材の世界にも、グラデーションのような揺らぎが存在しています。口にするまでどちらか分からないというささやかな緊張感と余白は、自然がもつ不確実さを、静かに思い出させてくれるのかもしれません。