スティーブ・ジョブズ(Apple)、イーロン・マスク(Tesla)、マーク・ザッカーバーグ(Meta)。
アメリカの巨大IT企業や有名起業家の名前は、だいたい頭に入っています。ニュースやSNSでも嫌というほど目にするし、今更名前を忘れることもありません。
……なのに、今まさに世界で最も勢いがあり、AI時代の覇者として時価総額トップに君臨する巨大半導体メーカー「NVIDIA」のトップだけ、どうしても名前が出てこないのです。
脳内で「NVIDIAのCEO……ええと、誰だっけ……」と検索をかけると、最初に出てくるキーワードはいつもひとつ。
「……革ジャン」
「革ジャン」だけで会話が成立する奇跡
ためしに周りと話をしてみてください。
「あのNVIDIAのトップの人さ……」 「あ、あの革ジャンの人?」 「そうそう!」
完璧に会話が成り立ちます。 本名の「ジェンスン・フアン(Jensen Huang)」という響きが出てこなくても、世界中で「革ジャンの人」で100%通じてしまうのです。
彼は台湾出身の起業家で、世界中のAI開発を裏で支えるGPU(画像処理半導体)のモンスター企業を率いる超重要人物。歴史的な偉人レベルの功績を残している人物なのに、記憶の占有領域を「革ジャン」という強烈なビジュアルが一括で奪い去っていきます。
なぜ彼は年中「革ジャン」を着ているのか?
スティーブ・ジョブズが「黒のタートルネックにジーンズ」をトレードマーク(制服)にしていたのは有名ですが、ジェンスン・フアン氏にとっても黒のレザージャケットは完全なる「制服」です。
新製品を発表する華やかなKeynote(基調講演)はもちろん、公式のカンファレンスやインタビュー、台湾の蒸し暑い気候であっても、彼は頑なに黒の革ジャンを着て登場します。
「毎朝、服を選ぶ時間を節約するため」という実用的な理由もあるようですが、結果として「革ジャン=NVIDIAの社長」という強烈なパーソナルブランディングが世界中に定着することになりました。
記号の勝利
名前をなかなか覚えてもらえないというのは、一見するとデメリットのようにも思えます。
しかし、「名前はパッと出なくても、姿やアイコンが一瞬で脳裏に浮かぶ」というのは、ブランディングとして最も強い状態ではないでしょうか。
「ジェンスン・フアン」という文字列は思い出せなくても、「黒い革ジャンを着た、AI業界のトップ」という認識だけは世界中の人々の頭の中に完璧に刻み込まれているわけです。
変わらないスタイルを貫き通し、ビジュアル一つで世界を納得させてしまうその姿には、心から尊敬の念を抱かずにはいられません。
まとめ

今日こそは彼の名前を頭に叩き込みました。 「ジェンスン・フアン、ジェンスン・フアン……」と。
ただ、明日ニュースで彼の姿を見かけたとき、私の口から最初に出る言葉は、たぶんやっぱりこうです。
「あ、……革ジャン」
