漆黒の毛並みの胸元に、一筋だけ浮かび上がる白い三日月。
ツキノワグマという名は、その胸に刻まれた三日月模様の美しさから名付けられました。日本の深い森の奥深くで生きる彼らは、どこか険しくも神秘的な気品を纏っています。
木の実を拾い、木々に登り、季節の移ろいとともに森の資源を分け合いながら生きる静かな存在。けれど、人間社会との境目が曖昧になるにつれ、そのしなやかで力強い身体は時に畏怖の対象として私たちの前に現れます。
人と森、その境界線に漂う静かな緊張感。
滅多に姿を見せない森の主でありながら、ひとたび出会えば圧倒的な自然の威厳を突きつけてくる。胸に抱いた小さな白い月は、人が足を踏み入れすぎることを拒む、森の深遠な標識のようにも思えてきます。