ホッカイシマエビと聞くと、鮮やかな赤色を思い浮かべる人が多いかもしれません。
けれど、生きている姿は少し違います。
海の中のホッカイシマエビには緑色の縞があり、海藻の影に溶け込むような色をしています。
それなのに、私たちの記憶に残るのは茹で上がった後の赤色です。
考えてみると、不思議なことです。
本来の姿よりも、食卓に並んだ姿のほうが強く記憶されている。
ホッカイシマエビは、海の中で過ごしていた時間よりも、食べられる直前の姿で覚えられているのかもしれません。
人も物も、案外そんなところがあります。
長い時間を過ごした本来の姿より、一瞬だけ見せた印象によって覚えられてしまう。
ホッカイシマエビを見るたびに、そのことを少し思い出します。
緑色で生きていた時間のほうが長かったはずなのに、私たちは赤色の記憶ばかりを持っている。
記憶というものは、ときどき本体ではなく変化した後の姿を選ぶのかもしれません。