インスリンとインシュリンという二つの言い方には、 薬の種類の違いではなく、 “日本語としての揺れ” がそのまま残っています。
どちらも同じ物質を指していて、 身体の中で血糖を調整する 大切なホルモンの名前です。
英語では insulin。 その発音をどう日本語に写すかで、 「インスリン」と「インシュリン」が 静かに分かれていきました。
医学の世界では、 表記を統一するために “インスリン” が正式な呼び方として使われています。
けれど、 昔の教科書や一部の医療者の言葉の中には、 今でも「インシュリン」という響きが そっと残っています。
言い方が違っても、 意味は同じで、 身体を守るために働く ひとつのホルモンです。
言葉の揺れは、 医学が日本に入ってきたときの 翻訳の歴史そのものでもあります。
インスリンとインシュリン。 その違いは、 物質の違いではなく、 “言葉が旅をしてきた跡” なのだと思います。