釧路川は、どこかから始まり、どこかへ向かって流れています。 その途中で、湿原を通り抜けたり、町をかすめたり、 ときには蛇行しながら、何かを残していくようにも見えます。
源流は屈斜路湖だと言われています。 けれど、始まりが湖なのか、空気なのか、記憶なのかは、はっきりしません。 流れの中には、魚がいるかもしれません。 イトウ、サケ、ヤマメ──名前だけが先に立って、姿はあまり見えません。
釧路川は、湿原の中でゆっくりと曲がります。 その曲がり方は、地形のせいでもあり、 時間のせいでもあり、 あるいは、何かを避けているようにも感じられます。
かつてこの川では、木材が流されていたそうです。 今では、カヌーが静かに進んでいます。 その違いが何を意味するのかは、よくわかりません。 ただ、流れているものが変わったということだけは、確かです。
釧路川という名前にも、いくつかの説があります。 薬の湖から流れる川、通り抜けることのできる川── どちらも、語感の中に余白が残されています。 その余白が、この川の輪郭を曖昧にしているのかもしれません。
釧路川は、ただの水の流れではないような気がします。 それは、語感と気配が、静かに滲んでいるような流れであり、 見えないものが、見えないまま流れていく場所なのかもしれません。