回転寿司の皿を眺めていると、シャコは少し独特な存在に見えます。
マグロやサーモンのような分かりやすさがありません。
見た目だけなら、初めての人が手を伸ばすまでに少し時間がかかるかもしれません。
けれど、一度食べると印象が変わります。
シャコの身は柔らかく、それでいてどこか弾力があります。エビともカニとも違う食感で、噛むほどに静かな甘みが出てきます。
派手ではありません。
むしろ目立たない側にいる寿司ねたです。
だからこそ、不思議と記憶に残ります。
寿司には、一口で分かる美味しさがあります。脂の強さや香りの鮮やかさは、その代表です。
一方でシャコは、食べ終わってから気づく種類の味なのかもしれません。
「あれは美味しかったな」
そんなふうに少し遅れて思い出します。
考えてみると、日常の中にも似たものがあります。
最初から強く印象に残る出来事よりも、何日かたってから思い出す時間のほうが長く続くことがあります。
シャコの味わいも、それに近い気がします。
寿司屋のカウンターでも、回転寿司でも、シャコはいつも少し控えめな場所にいます。
それでも長く寿司ねたとして残り続けているのは、目立たない魅力を知る人がいるからなのでしょう。
派手な人気とは違う場所で静かに選ばれ続ける。
シャコには、そんな寿司ねたらしい時間の流れがあるのかもしれません。