ヒラタケを炒めていると、ときどき森の匂いを思い出します。しいたけほど強くなく、えのきほど控えめでもない。その中間にあるような香りが、フライパンの熱で静かに立ち上ります。
そこへバターを加えると、香りの輪郭が少し変わります。ヒラタケが持つ土の気配に、乳製品のやわらかなコクが重なります。そして最後に醤油が入ると、湯気の中にどこか懐かしい香りが生まれます。
ヒラタケは水分を多く含んでいます。加熱するとその水分が抜け、うま味が少しずつ濃くなります。バターはそのうま味を包み込み、醤油は全体をまとめる役割をしているようにも見えます。複雑な料理ではありませんが、それぞれが静かに居場所を持っているのかもしれません。
見た目はきのこの炒め物です。けれど箸を入れると、やわらかさと弾力が同居しています。噛むたびに広がる香りは派手ではありませんが、食卓に小さな変化を残してくれます。
特別な日ではなく、冷蔵庫にヒラタケが残っている日の料理。短い時間で作れて、食べ終わったあとも香りの余韻が少しだけ残る。ヒラタケのガーリックバター醤油炒めは、そんな日常の隙間に収まる一皿なのかもしれません。