釧路駅の構内に、「SKIPP(スキップ)」という売店があります。 その名前は軽やかで、どこか旅の途中にふと立ち寄るような響きを持っています。 けれど、並んでいるものは、案外重たい──海の記憶、季節の記憶、人の手の記憶です。
SKIPPは、釧路市水産加工業協同組合が運営する直売店です。 いわしのほっかぶりずし、サバやサーモンの詰め合わせ、たらば寿し、かきべん── それぞれの弁当には、魚の脂や酢飯の酸味だけではない、何かが詰まっているように感じます。
たとえば、いわしのほっかぶりずし。 イワシの上に酢漬け大根が乗っていて、その姿が「ほっかぶり」に見えるからそう名付けられたそうです。 語感の遊びと構造の重なりが、記憶のかたちになっているようにも思えます。
サバには生姜、サーモンには山葵、大葉。 薬味の違いは、味の調整だけでなく、記憶の演出でもあるのかもしれません。 それぞれの弁当が、釧路の海と人の手の記録を、そっと包んでいるように見えます。
SKIPPの営業時間は朝から夕方まで。 売り切れることもあるそうで、予約をすすめる声もあります。 けれど、ふらりと立ち寄って、残っていた弁当を手に取る── そんな偶然も、旅の記憶にはちょうどいいのかもしれません。
この売店が何を売っているのか、はっきりとは言い切れません。 魚の弁当かもしれないし、語感の余白かもしれないし、 あるいは、釧路という場所の、静かな記憶の断片なのかもしれません。
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